−解説− 1997年、Blackmore's Night(ブラックモアズ・ナイト)はアルバム「Shadow Of The Moon」でデビューを飾りました。 バンド名はこのバンドの主管であり、すべてのオリジナル曲を作っているRitchie Blackmore(リッチー ブラックモア)とCandice Night(キャンディス ナイト)に由来しています。 またRitchieが自身の夜を持つという意味もあるそうです。

 その音楽はルネッサンス音楽をベースにしたトラッドフォーク/ロックと表現するのが適切でしょうか。 “ルネッサンス音楽”といっても“宮廷”、“貴族”といったお堅いイメージではなく、むしろ“ドイツの下町酒場”や“たき火を囲んで踊るジプシー”といったイメージがぴったり来ると思います。 一時期日本でも流行したケルト、ワールド・ミュージックにカテゴライズされてもよいのではないでしょうか。


バンドのリーダーにして作曲者であるRitchie Blackmoreは自身のバンドについて
「基本的にはジプシー音楽だ。 ジプシーの音楽をモダンなエレクトリックのフィーリングで捉えようとしたものなんだ。 魂に響くものがある。
 
BGMになるような音楽ではなくじっくり聴きたくなる曲なんだ。私たちのハートの奥底に触れる何かがある」(Burrn!誌:1996年9月号)と表しています。
「400年前のヨーロッパで、焚き火の周りで演奏されていたような、ロマンチックな音楽なんだ」
上のRitchieの言葉を借りるならば「ジプシーの音楽をエレクトリックのフィーリングで」というイメージが結成当時だとするとアルバムを重ねる毎に「エレクトリック楽器は増えたけれどもフィーリングは完全にジプシー(ルネッサンス)音楽」というように変わてきました。「ルネッサンス音楽に憧れるロック・ミュージシャン」から本当のモダン・ルネッサンスバンドへと進歩してきたように思います。

 さて、ここで少しだけ2人について書きたいと思います。Blackmore's NightはRitchie自身常に“バンド”であると言っていますが日本風に言えば“ユニット”ということになるでしょう。バンド名のもう一方を担うCandice以外のメンバーはその歴史の中で幾度かかわっています。日本のロックバンド、B'zと同じ形態だと考えていただければいいかと思います。メンバーは変わってもRitchieとCandice、その2人がいる限りはこのバンドは続くからです。
     
 まずはRitchie Blackmoreについて。 1945年4月14日生まれのイギリス人です。Rolling StonesやBeatlesなどこの年代のイギリスは有能なミュージシャンの宝庫だったようです。 彼もまたミュージシャンを目指しロンドンのヒースロー空港の無線技師をしながら下積み時代を過ごしました。 セッションや所属するバンド、Outlawsを行き来しながら活動、1968年にはキーボード奏者のJon LoadとDeep Purpleを結成します。 このバンドがブレイクし、彼も先のミュージシャンに負けない名声を得ました。 そして1975年にはRainbowを自身のバンドとして結成、このバンドで彼は特にヨーロッパや日本でギター奏者として、作曲者として特別なカリスマを得ます。 じつはRitchieはRainbow結成の1年前、1974年にルネッサンス音楽に出会い、すっかり魅せられていたのです。 当時の音楽を聴くとロックン・ローラーであったRitchieが自分の音楽とルネッサンス音楽の世界を結び付けようと試行錯誤した跡が見られます。 しかしこの時期はまだ彼自身が自分の作る音楽そのものをルネッサンスにする技量がなかったようです。 彼自身も結成当時のインタビューではそう語っています。
その後Deep PurpleやRainbowの再結成がありバンドの行き来がありましたが1997年、当時フィアンセのCandice Nightとともに長年の夢であったルネッサンス音楽をベースにしたバンド、Blackmore's Nightを結成し、現在に至ります。
     
 つぎにCandice Nightについて。1971年5月8日生まれのアメリカ人です。 Ritchieと出会うまで、彼女にミュージシャンとしてのキャリアはありませんでした。 しかし幼少の頃から音楽を心から愛せる女性だったようです。 モデルや広告関係の仕事をしているときも常に“何かが足りない”と感じていたそうです。 彼女はそれが音楽だと気付き、1989年、地元のラジオ局で働くようになりました。 実は同年、いくつかのバンドがジョイントで行ったコンサートでDeep Purpleとして出演したRitchieを見ていたのです。 わずかその半年後、1989年11月4日、彼女はRitchieの所属するバンド、Deep Purpleと自分のラジオ局のサッカーの試合でRitchieと出会うのでした。
そこからが彼女のミュージシャンとしての人生の始まりでした。 1993年のDeep Purpleのコンサートではバックボーカルを、1995年に発売のRainbowのアルバムでは作詞を手掛けています。 そしてその音楽的才能はRitchieと共にルネッサンスバンドの結成するにいたったのです。 1997年、ファーストアルバム「Shadow Of The Moon」がそのデビュー作となったのです。
   
 2008年10月5日、二人はめでたく夫婦となりました。2010年5月27日には二人の最初のベービーで女の子のAutumn Esmereldaが、2012年2月7日には二人目となる男の子、Rory Dartanyanが誕生しました。 歳を追うごとに絆が深くなっていく二人、真の愛のある二人はきっと素晴らしい音楽を作り続けてくれるでしょう。